我が国は第二次大戦の荒廃の中から工業立国、貿易立国を志し、見事にそれを実現してきた。乗用車、二輪車、造船、DVD、カメラなどの製品から、これらを作る工作機械、ロボット、部品、素材など、日本が世界一の生産を誇る品目は枚挙にいとまがない。こうした素晴らしい製品群が、そしてそれらを生み出す日本のものづくり産業が、今も我が国の貿易収支と経済を支えている。
又、現在、IT革命の進展が叫ばれているが、ここにおいても、「ものづくり」の重要性は失われることはない。ITにより生みだされるデータはこれまで以上に加速度的に増大する一方、これらの増大するデータを緻密かつ迅速に組み込んで製品として出力していく出力機や生産システムの開発が必要になり、その面からもIT時代において「もの」を「つくる」重要性は減じるどころか、その重要性は一層増してくると考えるべきである。
「ものづくり」が産業の発達にとって決定的に重要なものであることを再認識するとともに、製造業を担う人々に対して、相応した敬意が払われる社会を目指さなければならない。こうした視点から「ものづくり」の現状を考えると、現場において優秀な技能を持つ人たちは、50歳を過ぎている人たちが多く、ものづくり技術の継承が容易ではない状況である。柔軟な頭脳を持った若者たちがものづりの現場に向かうようにならなければ、技術の継承は困難である。ものづくりの基本が「人」づくりにあることを十分踏まえた上で、新しい試みに着手することが、今、望まれることである。 |